Super Randonnées Mt.Aso Geotourism/SR600阿蘇山ジオツーリズム
注意:こちらはACP公認のSR600(シューペル・ランドネ)です。R熊本独自パーマネントはありません。 お間違えのないように。
◆はじめに(開催の趣旨)
ランドヌール熊本がある九州・熊本には世界有数のカルデラの1つ、阿蘇カルデラがあります。東西18km・南北25km・周囲125kmの中心には「釈迦の涅槃像」と呼ばれる阿蘇五岳(根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳)が鎮座し、このうち中岳にある阿蘇中岳第一火口では現在も活発な火山活動が続いていることから、世界にも珍しい活動中の火口を間近で見ることが出来ます。そんなカルデラ内には約5万人もの人々が火山と共に暮らし、長い年月を掛けて人の手による採草と野焼きで維持された広大な牧野の風景も相まって、世界に誇れる素晴らしい景観を見ることが出来ます。
そんな阿蘇はランドマークの熊本城や通潤橋、天草と並ぶ「火の国熊本のシンボル」であり、阿蘇五岳、外輪山、火口原のすべてを含む阿蘇カルデラ全体の総称として、これを「阿蘇山」と呼びます。また2014年9月にはユネスコの世界ジオパーク(ASO UNESCO GLOBAL GEOPARK)にも認定されました。
"昔も今も変わらぬ風がそよぐ阿蘇。自然と共生する人々の想いは新たな風に乗って"
熊本と大分に甚大な被害をもたらした2016年4月の熊本地震。とりわけ阿蘇地方も交通の要であった橋やトンネルが崩落、道路や鉄道の寸断もあり、日常生活はおろか観光客の著しい減少など経済的な損失が相当ありました。あれから4年。2020年8月にJR豊肥線が全線開通、同10月には国道57号線の現道復旧と二重峠トンネルを含む北回りバイパスの開通。そして2021年3月(予定)には新たに架けられた新阿蘇大橋が開通し、阿蘇へのアクセスは地震以前より向上した様に思えます。
ですが地震後の暮らしは日々不安で、インフラが整いつつある中でもその営みは道半ば。それでも自然の脅威と厳しい環境を受け入れ、共に阿蘇で生きるという選択はこの土地を愛しているからこそ。主要な産業である観光、農業、酪農に携わる多くの人達の想いが、阿蘇に人を呼び「阿蘇っていいね」「また阿蘇に行きたい」と言って貰える様な魅力溢れる地域となるよう、今日も景観を維持し、手塩にかけた特産品や食材、趣向を凝らしたアクティビティなど、阿蘇の素晴らしさを国内外に発信し続けています。
そして阿蘇のみならず、2020年7月の豪雨による球磨川の氾濫を中心とした水害から懸命に立ち直ろうとする人吉球磨地方と芦北地方も同じ想いです。「頑張るばい熊本!」を合言葉に前に向かって進む私たちの、そんな"今"の熊本を見て貰いたくて、多くの方々に足を運んで欲しいと願って止みません。
"ジオツーリズムとは大地の遺産を訪ね、育まれた自然と文化を知り、地形と景観を巡る旅"
熊本・阿蘇をシンボリックな舞台とし、阿蘇山の大噴火によって形成された地形や景観をはじめ、熊本大分宮崎に跨り九州の自然や文化を巡るルートで繋ぐ、シューペルランドネを通して私たちが考えるオンサイトツーリズムの形態。それがSR600阿蘇山ジオツーリズムです。
阿蘇山ジオツーリズムの旅は復旧した国道57号線の現道から、阿蘇カルデラ唯一の裂け目である立野火口瀬を登るところから始まります。熊本地震による土砂崩れで鉄道と国道を埋め尽くした長さ約700m 幅約200mの大規模崩落の爪痕、落橋崩壊した旧阿蘇大橋の残骸が今も見ることができ、大地震の凄まじさと自然災害に対する畏怖の念を抱く場所の1つです。北外輪山と阿蘇五岳が囲む北の火口原・阿蘇谷。田園風景が広がる阿蘇平野は火山と共に生きる人々の営みを垣間見ることが出来ます。復興のシンボルとして阿蘇観光の玄関口に設置された麦わら海賊団のブロンズ像。そこから阿蘇山上を目指す阿蘇パノラマラインへ。木々を抜けるとそこは360度に広がる大パノラマ。裾野を走るその道は牧野に描かれたシュプールのよう。火山が生み出した景観の米塚や草千里ヶ浜は絶好のロケーション。大地の息遣いとも言える噴煙と間近に迫った火口を擁する荒涼とした大地の阿蘇山上。機会に恵まれれば是非とも火口見学をお勧めしたい。その迫力と大地のエネルギーに圧倒されることでしょう。
阿蘇カルデラの南側は南郷谷と呼ぶ南阿蘇エリア。南郷谷を見下ろす伝説のライダーも愛したグリーンロード南阿蘇は敬意を込めて別名"ケニー・ロード"と呼ばれます。水路橋として有名な石橋・通潤橋、晴天なら日中は遥か遠く有明海まで見渡せる素晴らしい眺望の大通峠、五木の子守唄発祥の地の五木村。そしてここからは九州最後の秘境、前半の山場である九州山地の最深部へ。11月には見事な紅葉が広がる五家荘を経て、九州道路最高地点の峠を越えれば、焼畑農法の発祥の地であり伝承文化と民族的特徴から日本三大秘境の一つに数えられる椎葉村、日向灘に面した日向市へと至ります。
旧高千穂鉄道の廃線跡に沿って五ヶ瀬川沿いの細道を進むと、神話に彩られた日本の聖地・高千穂、天照大御神を祭る天岩戸神社へと続きます。道は再び九州山地を越える峠道に。希少動植物の宝庫で独特の景観美と原生的な自然が残る祖母・傾・大崩山ユネスコエコパーク。その緩衝地帯に位置する尾平越。のどかな田園風景に突如現れる名瀑"東洋のナイアガラ"原尻の滝は9万年前の阿蘇の大噴火とその大火砕流によって形成されたもの。くじゅう連山の裾野に位置し世界屈指の炭酸泉を誇る、著名な文化人らも愛した長湯温泉。峠を越えて眼下に飛び込んでくる別府湾。そして立ち上る無数の湯けむりと漂ってくる温泉地ならではの湯の香り。そこは九州屈指の温泉地で湧出量世界第2位(日本国内第1位)を誇る別府。
別府湾を背にして鶴見岳・由布岳を横目にヒルクライム。高原のピークを越えれば、そこは人気の温泉リゾート地・湯布院。緑が風に揺れるくじゅう連山の大パノラマを四季折々に見せる景観。牧野の春は野焼き、夏は新緑、秋はススキの穂の海。やまなみハイウェイは誰もが一度は走ってみたい九州ツーリング人気NO.1ルート。阿蘇五岳からくじゅう連山まで一望できる阿蘇エリア屈指の絶景スポット大観峰。左手に阿蘇五岳”釈迦の涅槃像”を拝みつつ、北外輪山の稜線を進むミルクロード。この道から望む雄大な阿蘇カルデラの景観こそがSR600阿蘇山ジオツーリズムの象徴であり、旅のフィナーレに相応しい。そんな余韻を残しながら迎えるフィニッシュまでの長いダウンヒルはまた格別なものとなるでしょう。
"SR600阿蘇山ジオツーリズムを走る全ての人達へ。至高のランドネに昇華すると願って"
阿蘇山はこのブルベにおける象徴の舞台です。阿蘇山はカルデラの内外、とりわけ北側の阿蘇谷(阿蘇平野)と南側の南郷谷(南阿蘇)で見せる表情が異なります。阿蘇エリアをたった一度だけの通過点とするのではなく、1度目は阿蘇平野から阿蘇山を越えて南阿蘇へと至るカルデラ縦走、2度目は北外輪山から阿蘇五岳と阿蘇平野の雄大な阿蘇カルデラを俯瞰で望む。出走時間や通過時間の関係で明るい時間に通過する事が難しくても、場所と時間を変えて2度通過していく阿蘇エリア。朝陽を迎え、暮れゆく夕陽を拝む。大地の遺産を訪ね、そこで生きる人々の営みと文化を知り、大地の恵みと育まれた九州の自然、地形と景観を巡る旅がここにあります。
◆終わりに(御礼)
私たちランドヌール熊本は長年に渡って九州でのSR600開催を模索して参りました。しかし熊本地震で被害を受けた道路や橋の復旧見通しが立たないまま、恒久的なパーマネントであるSRコースを計画するのは大変困難でした。でも私たちは来るべきその日を信じて、静かにその時を待ち続けました。やがて思いは少しずつ時間を掛けて形となり、SR600のルールに準じたテストフィールドであるR熊本独自パーマネントとなって行われました。ここで得られた参加者の感想をはじめ、多くの方から寄せられた反響と期待の声が、SR600化に向けた手応えと後押しに繋がったのは言うまでもありません。
私たちの願いは九州のブルベシーンがこれからも益々盛り上がっていくこと。そしてブルベを通じて九州の魅力を伝えていく。これは九州のブルベに携わる全ての人の想いです。山のスケール感に違いはあれど、四季折々の里山の風景、美しい海岸線、山と海が織り成す景観美、九州ならではの食材や食文化といった楽しみが沢山あります。ゆくゆくは九州の各クラブが展開するBRMやパーマネントにもご参加下さい。とはいえ、九州の魅力に取り憑かれ何度も足を運んでいる人も、今回が九州初遠征の人も、もちろん地元を知り尽くした九州人も、まずはSR600阿蘇山ジオツーリズムから。皆様のご参加をお待ちしております。是非に。
最後になりますが、SR600阿蘇山ジオツーリズムの実現に向けて力をお貸し下さった全ての方々に対し、この場を借りて感謝と御礼を申し上げます。
ランドヌール熊本 スタッフ一同
コースオーナー 髙橋宏通
2021年1月吉日