ブルべ概要

ブルベ(Brevet)はフランス語で認定の意味します。

 規定の距離を規定時間内に走るなどの基準をクリアすると認定されるもので、ランドネをスポーツとして楽しむブルベはフランスを中心に広く根付いています。
大勢で自転車走行を楽しむ一般のサイクリングイベントとは異なります。
レースではなくランドネ(長距離サイクリング)の実力認定システムです。
“ランドネ”はフランス語でトレッキングやハイキングの意味です。自転車に対して使われる場合、無サポートで長距離を走る耐久サイクリングを指します。

ランドネはレースではなく、各参加者が自己のリスク管理の元に補給や機材の修理などを自力で解決し完走を目指す、自転車スポーツ発祥からの伝統のあるサイクリング形式です。

長距離を走ることによって、峠やリアス式海岸などアップダウンの激しく、しかし美しい場所を自ずと通過することになります。これも自転車の伝統的な楽しみ方です。しばしば、ブルベに参加する人をランドヌール (Randonneur、ランドネを行う者) と呼びます。

認定をするための世界標準の規則に基づいたランドネ走行会をBRM(ブルベ・ド・ランドヌール・モンディオ)と呼びます。

BRMとは 指定された200・300・400・600・1000km(ACP認定)、1200km超(RM認定、P.B.PのみACP認定)のコースを無サポートで規定時間内に完走すると認定を受けられるもので、自転車版検定試験です。

そしてもっとも伝統がありBRMの最高峰が、4年に1回開催されるパリ-ブレスト-パリ (Paris Brest Paris Randonneur: P.B.P.) なのです。P.B.P.は次回2023年の夏、開催されます。

日本では、BRMが導入されるときにはパーマネント形式のルートN(現在休止中)が実施されていました。これは日本独自のブルベと言えるでしょう。ただ、当然ながらACP認定ブルベではありません。ランドヌール熊本ではACP公認のブルべはBRM〇〇熊本○〇kmと称します。

日本では、ブルベといえばACP公認のBRM、RM認定の1200km以上と思いがちです。
しかし、実際には様々な種類のブルベがあり、BRM、RMはその中のひとつです。
フランスではBRM以外のブルベが数多く行われています。

BRMの最高峰であるPBPが正式にはParis Brest Paris Randonneurと名付けられているのは、他のブルベにもPBPがあるため、はっきりと区別する必要があるからです。

日本では、BRMが導入される前にはパーマネント形式のルートNが実施されていました。これは日本独自のブルベと言えるでしょう。ただ、当然ながらACP認定ブルベではありません。ルートNは現在は休止中ですが、日本のBRMを統括しているAudax Japanとは関係ありません。

では、BRM以外にどのようなブルベがあるのでしょうか。フランスを中心に紹介します。

まず、ブルベで主なものは、ランドヌール(Randonneur)、オダックス(Audax)、ディアゴナール(Diagonales)の3種類です。
通常、ランドヌールはBRMを指しますが、フランスではランドヌールまたはランドネとついたBRM以外のブルベは数多くあります。
しかし、国際的に発展してフランス以外の国でも開催されるようになったのがBRMとAudax(もともとはイタリアで誕生)なので、フランス以外の国ではブルベと言えばBRMやAudaxというように認識されるようになったようです。

オダックス Audax

オダックスは1897年6月12日、イタリアのサイクリスト12人がローマからナポリまでの230kmを1日で走ったことから始まりました。当時の道路や自転車からすると、まさにラテン語のAudax(大胆な)ものだったのです。
日の出から日没までに200km走れるサイクリストのことをAudaxと言ったそうです。

Audaxはキャプテンの先導のもとに決められた一定速度で走るものです。

1904年、ツール・ド・フランス創始者であるアンリ・デグランジェ(Henri Desgrange)がフランスに導入、ACPはその後16年間Audaxを実施していました。

しかし、ACPとアンリ・デグランジュとの間に軋轢が生じ(ACPがデグランジュの新聞l’Autoのライバル紙のイベントに協力したことが主な理由)、デグランジュがACPからオダックスの認定権を剥奪したため、オダックスの存続を望むメンバーはACPを脱退し、デグランジュとともにUnion des Audax Cyclist Parisien(現在のUnion des Audax Francaises/UFA))を設立してBrevet Audaxを実施するようになりました。

そしてACPに残ったメンバーは1921年に個人個人が自由な速度で走るスタイルのBrevet de Randonneurs Francaises(現在のBrevet Randonneurs Mondiaux)を開催するようになったのです。

Audaxは現在でもUFAがBrevet Audaxとして実施しています。休憩時間を除いた走る平均時速22.5kmで休憩時間も決められています。Audaxには1000kmや5年毎に開催されるParis Brest Paris Audaxもあります。ACP認定のものはParis Brest Paris Randonneurです。

100km7時間
200km14時間
300km20時間
400km27時間
600km40時間

また、RM認定のMGM(MADRID-GIJON-MADRID)1200kmはランドヌールですが、MGM主催クラブL’UAIはオダックス形式のBREVET 200~600kmを開催しています。

UFAでは他にも、Randonnees permanentes という超長距離サイクリングがあり、アンリ・デグランジェが作ったガリビエ峠を目指すルートフランスからイタリア・ブリンディシまで2250kmなどがあります。

ディアゴナール Diagonales

ディアゴナールはシクロツーリズムの父と呼ばれるベロシオ(ポール・ド・ヴィヴィ)が発案し、1930年に始まったものです。
現在でも、フランス・シクロツーリスム連盟(FFCT )によって主催されています。
フランス国内のディアゴナール・ド・フランスに止まらず、ユーロディアゴナール、グラン・ディアゴナール・デューロップへと続き、ディアゴナールだけでヨーロッパ横断(縦断)ができるという壮大なるブルベです。

1. ディアゴナール・ド・フランス Diagonales de France

ディアゴナール・ド・フランスはフランスの国土を六角形に見立てて、対角線設定した9つのルート全てを走破することを目指すものです。
ルートには平均速度から計算された制限速度がありますが、スタートとゴールが決まっているだけで、コースは自由に設定できます。
また、走行する日程は走者も自由に決めることができます。
走行中は全て自力で賄うのが鉄則で、自動車の伴走は禁止されています。
ベロシオの遺言に従い、走行時間を公表することは認められていません。
これらの規則に反すると、永久に参加資格が剥奪されます。

ルート距離制限時間
Brest – Menton(ブレスト~マントン)1400 km116 時間
Dunkerque – Perpignan
(ダンケルク~ペルピニョン)
1190 km100 時間
Dunkerque – Menton
(ダンケルク~マントン)
1190 km100 時間
Hendaye – Strasbourg
(エンダイユ~ストラスブール)
1170 km99 時間
Brest – Perpignan
(ブレスト~ペルピニョン)
1060 km89 時間
Brest – Strasbourg
(ブレスト~ストラスブール)
1050 km88 時間
Dunkerque – Hendaye
(ダンケルク~エンダイユ)
1050 km88 時間
Hendaye – Menton
(エンダイユ~マントン)
940 km78 時間
Strasbourg – Perpignan
(ストラスブール~ペルピニョン)
940 km78 時間

2. ユーロディアゴナール EuroDiagonales

ユーロディアゴナールはディアゴナールの起点となる6つの都市からそれぞれ国外にルートが設定されています。

ルート距離制限時間
STRASBOURG-BUDAPEST
(ストラスブール~ブダペスト)
1150km150時間
DUNKERQUE-COPENHAGUE
(ダンケルク~コペンハーゲン)
1075km150時間
(フェリー4時間含む)
HENDAYE-LISBONNE
(エンダイユ~リスボン)
1170km151時間
MENTON-BARI(マントン~バリ)1190km152時間
BREST-INVERNESS
(ブレスト~インバーネス)
1190km160時間
(フェリー8時間含む)
PERPIGNAN-MALAGA
(ペルピニョン~マラガ)
1265km171時間

3. グラン・ディアゴナール・デューロップ

 Grandes Diagonales d’Europe

グラン・ディアゴナール・デューロップは最初にユーロディアゴナール、次にディアゴナール、さらに2本目のユーロディアゴナールを走り、3つのルートをつなぐ際の停止時間は48時間以内でなければいけません。

  • インバーネス~ブレスト~マントン~バリ
  • コペンハーゲン~ダンケルク~ペルピニョン~マラガ
  • ウィーン~ストラスブール~エンダイユ~リスボン
    *ウイーンはブダペストにかわってます。

ブルベ・シクロモンターニャル・フランセーズ
Brevet cyclo-montagnard francais
 (BCMF)

真ん中の六角形がフランス国内を走るディアゴナール・ド・フランス、6つの都市から国外に向かってユーロ・ディアゴナールの6ルートが延びる。ユーロ+フランス+ユーロとつなぐとグラン・ディアゴナール・デューロップとなる。

アルプス山脈、ピレネー山脈、ジュラ山地、ヴォージュ山脈、そして中央山塊の5つの山岳地帯で実施されているのがBCMFです。
最近はCyclo-Montagnardesと呼ばれるようです。
ルートは毎年FFCTのサイトに掲載されています。80~200kmで累積標高2000~4000mとなっていますが、実際には230kmで4900mというアルプスルートもあります。
BCMFにはそれぞれのルートにBrevet de Randonneursとついていますが(つかないものもあります)、BRMではありません。

2013年BCMFルート

FFCTで他のブルベ

FFCTのイベントにはブルベと名のつくイベントが数多くありますが、長距離を制限時間内に完走すると認定を与えるものばかりではなく、むしろ少ないようです。
要は、主催者から何らかの課題が与えられ、それをクリアした者に「認定」を与える形式のイベントはブルベと呼ばれるということです。

  • Brevet feferaux100- 150 – 250 – 350 – 500 – 1000 kmまで
  • ブルベ・ド・イニスィアスィオン Brevets d’initiation
    12~18歳の青少年を対象に、サイクルツーリングの様々な側面を教示し、自立を促すサイクリングイベントです。
  • ブルベ・ツーリスティク Brevets touristiques
    フランス国内の風光明媚な地域や、地形的および歴史的に特別な地域を単独あるいはグループで各自のペースで走る、旅の要素の強いサイクルツーリング。
  • VTT・ド・ランドネ VTT de randonnee
    MTB版のブルベ。

パーマネント Permanent
フランス以外でも開催されているブルベの一つにパーマネント(Permanent)があります。
パーマネントの特徴は、(ルートが通行止めになっていない限り)一年を通していつでも走ることができ、出走者が出走日時を自由に選べることです。

主催者が指定した特定の日時にスタートするイベントと異なり、出走者が好きな日時に出走することができます。
その反面、出走者自身の事前準備と責任がより強く求められます。
また、パーマネントのコースは基本的に一年だけで終了することはなく、同一のコースが恒久的に実施されるのも大きな特徴です。
なお、パーマネントは世界各地で行われていますが、BRMと違い認定団体によってルールが異なることも特筆されます。
AudaxUKが認定するパーマネントはAudaxUKが定めたルールで実施されます。
RUSAが認定するパーマネントはRUSAが定めたルールで実施されます。
そして、AudaxUKとRUSAではパーマネントのルールに違いがあります。
RUSAが実施しようと、AudaxUKが実施しようと、ACPが認定し、ACPが定めたルールで実施されるBRMとの違いのひとつです。

日本で2013年から実施するシューペル・ランドネ(SR600)は、パーマネントのひとつでACPが認定します。
そのためACPが定めたルールで実施されます。
また、2019年よりAJ認定パーマネント、ランドヌール熊本認定の独自パーネントを開催しています。

参照先:一般社団法人オダックス・ジャパン

Audax Japan

独自ブルべ

R熊本では独自ブルべを開催しています。開催は主に200km以下で不定期ですが開催されるときとHPに掲載します。規則はBRM規則に準じます。